笠ひろふみ衆議院議員 RYU HIROFUMI official website
国会質疑
165-衆-本会議-10号 平成18年10月26日

○笠浩史君 民主党の笠浩史でございます。
  民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました日本・フィリピンの経済連携協定について、政府に対して質問を行います。(拍手)
  私ども民主党は、WTOにおいて自由で多角的な貿易体制の強化充実のための協議を促すと同時に、アジア太平洋地域における相互協力と信頼醸成を進め、EPA、FTAの締結を積極的に推進していくべきと考えております。そして、このような蓄積によって、究極的には、東アジア共同体構想の実現へとつなげていくためのビジョンを描いております。ともに生きる社会づくりを掲げる私ども民主党としては、アジアに対してもEPA、FTAのネットワークを整えつつ、共同体的なつながりが熟していくように努めてまいりたいと思っております。
  まず、外務大臣にお伺いいたします。
  今回の日本・フィリピン経済連携協定も、このような東アジア共同体構想につながるものとして位置づけられているのでしょうか。基本的な哲学についてお聞かせください。そして、その際、アメリカをどう位置づけるのかも含めて、具体的にどのような構想をお持ちなのかもお答えください。
  各国では、WTO交渉が停滞する中、EPA、FTA締結の動きが活発化しております。アジア諸国でも、特に中国は、積極的に二国間及びASEANとの協定交渉を加速させています。我が国としては、東アジア共同体構想について、やはり日本が最終的にリーダーシップをとっていきたいとの思いを強く持つべきであると思いますが、外務大臣は、今後日本がイニシアチブをとるためにどのような方策をお考えになっているのか、お聞かせください。
  また、包括的なWTO体制と二国間関係であるEPA、FTAを我が国の経済外交政策の中でどのように位置づけ、推進し、活用していくのでしょうか。現在交渉中断に陥っているWTOドーハ・ラウンドについて、事態をどのように打開し、交渉再開に進めていくおつもりなのかもあわせてお答えください。
  今回のフィリピンとの協定のほか、我が国はこれまで、シンガポール、メキシコ、マレーシアとEPAを締結、発効しましたが、タイとは、大筋合意にこぎつけたものの、先般のクーデター等により締結交渉が停滞しており、韓国とは交渉が中断したままです。先日の日韓首脳会談では、中断していた交渉を再開したい旨の発言もあったと聞いておりますが、政府は、現在交渉中の各国の動向をどう認識し、交渉をどのように進めていくのでしょうか。
  また、政府からは、今回、メキシコとのEPAの規定に基づき、今後三年間の関税割り当ての枠内税率を確定する内容の議定書も提出されております。今後のEPA交渉を成功させるためにも、既に発効しているEPAに対する評価をしっかりと検証しておくことが極めて重要でございます。EPA締結による経済や外交への効果、影響についてお答えください。
  日本・フィリピンEPAの最大の眼目は、初めて労働市場を一部開放し、フィリピン人看護師と介護福祉士を受け入れることだと思います。我が国では、看護師と介護職員の不足が深刻化しております。現在、看護師は全国で四万人以上も不足しており、介護福祉士についても、充足している施設は四割にも満たないという調査があります。このような状況のもと、我が国としてフィリピン人看護師と介護福祉士を受け入れるべきと考えて今回の協定に同意をされたのか、厚生労働大臣にお伺いをいたします。
  ちなみに、我が国の看護師や介護福祉士の方々の置かれている労働環境は極めて厳しいのみならず、結婚や出産に伴って職場を離れざるを得ないケースも多いと聞きます。フィリピン人看護師、介護福祉士の受け入れに当たり、まずは日本国内の医療、介護の現場における労働条件の現状をどう認識され、今後どのような施策が必要とお考えなのか、厚生労働大臣の見解をお聞かせください。(拍手)
  医療、介護の現場における慢性的な人手不足の緩和のため、フィリピン人看護師、介護福祉士を安価な労働力として活用しようとしている施設があるという話も聞いております。一方で、日本人の看護師、介護福祉士のさらなる待遇悪化を危惧する声も聞こえてきます。日本看護協会は、自国の看護師不足を解消するとの理由で安易に外国人看護師を受け入れるべきではないと、反対の声明を出しているほどです。
  フィリピン人看護師は世界でも優秀だとされていますが、英国などの英語圏では英語で試験を受けることができますが、今回の協定では、日本で働くためには、当然ながら日本語で試験に合格しなければならないなど、ハードルは高く、現実的には受け入れはなかなか困難だと思われます。そもそも、政府としては、今後、フィリピン人看護師、介護福祉士の受け入れを拡大するつもりがあるのかどうか。もしあるのだとしたら、このために具体的にどのような施策を考えているのかについてもお答えください。
  さらには、実際の労働条件、労働環境が劣悪では、せっかく受け入れ枠を整えても優秀な人材が集まらず、その活用も難しくなります。フィリピン人看護師、介護福祉士を安価な労働力と考えるのではなく、医療に携わる専門家として、日本で働く仲間として、万全な受け入れ体制を整えることも必要です。
  フィリピン人看護師、介護福祉士の報酬については日本人と同等以上とされましたが、受け入れる施設側に遵守させるとともに、より一層の待遇改善を図ることで優秀な人材を確保すべきだと考えます。人の命や健康、心の問題にかかわる医療、介護の現場において、言葉の壁や制度、生活習慣の違いを克服し、優秀な人材を確保するために、どのような受け入れ体制を整えていくのか、また、研修の実態の確認など受け入れ後のフォローをどのように行っていくのか、厚生労働大臣にお伺いをいたします。
  政府は、外国人労働者の受け入れについて、専門的、技術的分野のいわゆる高度な技術者などに限定し、一般労働者は原則拒否するとしながらも、個別に在留資格を設け、なし崩し的に受け入れ拡大を進めてきました。一方で、現在、日本で働いている外国人労働者の四分の一以上が不法残留者とも言われております。現在の外国人労働者の就労状況に対する政府の見解をお伺いするとともに、今後、少子高齢化の進展によって労働力不足が懸念される中、外国人労働者をどのように受け入れていくのか、政府の基本姿勢をお伺いいたします。
  特に、一九九三年から、途上国との国際協力を進める目的で、外国人研修・技能実習制度が始まりました。この制度を使って多くの研修生が入国をしております。しかしながら、研修中は企業との雇用契約がないため、労働基準法などが適用されず、単に安価な労働力として長時間の単純労働をさせるケースが多く、実習に移行後も不当な条件で働かせる企業も多いのが実情です。こうしたこともあり、多くの研修生が、失踪したり、不法滞在で資格外の職についています。こうした現状を放置することは断じて許されません。政府として、こうした失踪者などの実態についてどの程度把握をされているのか、具体的にお答えください。
  また、厚生労働省では研究会を設置し、今後の対応を検討すると伺っております。いつまでに結論を出すつもりなのか、そして、どのような対策を想定されているのかをお答えください。
  次に、農業の問題についてお伺いをいたします。
  今回、フィリピンとの協定交渉では、農業分野において砂糖の関税率引き下げが問題となり、結局、四年後に再協議となりました。また、今後、アジア諸国、ASEANとの交渉に当たり、米の問題が協議の中で浮上することも予想されます。このように、農業分野における交渉で我が国が苦境に立たされる原因は、政府・自民党が長期にわたって続けてきた場当たり的でなし崩しの農政により、日本の農業基盤が脆弱になってきたことに尽きます。EPA、FTA交渉を有利に進めるためにも、早急に日本の農業政策の抜本改革と基盤の強化を行わなければなりません。
  私ども民主党は、農政を根本から改革するため、総額一兆円に及ぶ個別所得保障政策を打ち出していますが、今後、国内の農業を育成しつつ、どのような交渉を展開していくのか、農林水産大臣にお伺いをいたします。(拍手)
  さらに、民主党は以前より、国際競争力を強化し、科学技術振興を図るため、知的財産権の強化に取り組んでまいりました。今回のフィリピンとの協定では、知的財産分野において、新たに権利侵害品の税関差しとめ対象の拡大や出願手続の簡略化などが盛り込まれました。模倣品製造は、ブランド品や各種ソフトのみならず、さまざまな分野で広がっており、にせものの薬品や、にせものの部品を使った製品によって生活の安全が脅かされる可能性も決して少なくありません。
  急増する模倣品、権利侵害品の対策は、我が国のみならず、各国にとっても喫緊の課題であります。模倣品の多くがアジアで製造され、流通しております。今後、ASEANを含むアジア諸国とEPA交渉を行うに当たり、こうしたことへの対策をどのように行っていくのか、政府の方針をお伺いいたします。
  また、知的財産の戦略的な活用が両国の経済発展に資すると考えますが、政府の認識をお聞かせください。
  最後に、東アジア共同体構想という壮大なビジョンのもとに、今回の日本・フィリピン経済連携協定を位置づけ、我が国としてこのような蓄積を積み重ねていくためには、アジア各国・地域からの信頼、協力が不可欠であることは言うまでもありません。ともに生きるアジアをつくるために、日本が果たすべき使命は大変大きいと思っております。力で力をねじ伏せようとする覇道ではなく、王道によりアジアの国々と接することのできる日本であるよう心から願って、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
     〔国務大臣甘利明君登壇〕