笠ひろふみ衆議院議員 RYU HIROFUMI official website
国会質疑
165-衆-外務委員会-7号 平成18年12月13日

○笠委員 民主党の笠浩史でございます。
  大臣、APEC、また二国間のいろいろな会談をされたということで、本当に御苦労さまでございました。その中から、先ほど報告がございました、特に日中外相会談、対中国関係というものについて、きょうは幾つか質問させていただきたいと思っております。
  まず、日中外相会談の中で、今月の二十六日、二十七日、この二日間にわたって日中の共同で歴史研究を、いよいよ第一回の会合を開かれるということで合意をされたと伺っております。
  去年、当時の町村外務大臣が、このときには教科書検定の問題もあって、そして、これは繰り返されてきたわけですけれども、非常に過敏な反応、あるいは去年の四月、北京や上海でいろいろな暴動というか反日行動が起こった中で、共同して歴史研究をしていこうじゃないかという提案をしていて、それが、一年半たちまして、さきの安倍総理の日中首脳会談の中で合意をされて、それを受けてのいよいよ具体的な研究開始というふうに私は認識をしております。
  それで、二〇〇八年中に研究成果を発表するということを目標にこれからこの研究が始まっていくということなんですが、まず外務大臣にお伺いをしたいんです。
  この成果というのは、大臣の中では具体的にどういったものを、その個別の中身ではなくて、想定されているのか。例えば、共有できる何かまとまったものが果たしてできるのかどうか。あるいは、お互いに歴史認識というものは当然ながら難しく、それぞれの独自の歴史観、歴史認識というものがあるわけですから、これはまとまらない場合だってあるわけですよね。そういった中で、報告書的なものをどういう方向でその成果の一つの成果物として出されようという思いで今回の研究が始まるのかということを、ちょっとまず大臣のお話を伺いたいと思います。
     〔委員長退席、嘉数委員長代理着席〕

○麻生国務大臣 今、日中歴史共同研究というのが過日のセブ島の日中外務大臣会合で、この二十六、二十七、正式に双方でスタートすることになったということであります。
  少なくとも、戦後六十年はもちろんのことですけれども、その前の古代史にわたって約二千年ぐらいにわたる話をずっとやっていくということなんだと思いますので、双方やはり忌憚のない意見を言い合わないといかぬところだと思っております。正直なところ、こっちはこう思っているというところを示さないと相互理解は進まない。
  しかし、言ったからといって相互理解が進むかと言われれば、それはなかなかそんな簡単にはいかないであろうということも想像がつきます。少なくとも、同じアングロサクソンで、どうでしょう、イギリスの小学校の教科書でアメリカの独立戦争は植民地の反乱と書いてありますし、そういった意味では、なかなか一致しにくいものは、世界の歴史を見ましても、そういうことになるという可能性はそうだと思いますし、アメリカの中でも、南北戦争は北部の侵略と南部の学校の教科書には書いてある。今はどうか知りませんけれども、当時は少なくとも私が学生のときはそう書いてありましたので、なかなか一致しにくいところはある。
  しかし、それはそれとして、双方の意見として両論併記みたいな形になろうかと思いますが、これが日本側の意見なんだということがはっきり出るというのは、これは笠先生、大事なところだと思いますので、何となく、こっちはこう思って、向こうはどう思っているだろうなというんじゃなくて、向こうはこう思っているんだというのがきちんと出されるというのが大事だと思っております。
  成果物につきましては、学者の方々のいろいろな御意見、知識に基づいていろいろ意見が出されてくるところだと思っておりますので、私どもとしては、その都度、それがどんなものなのであろうかということに関しましては、ちょっと私の想像と学識レベルが全然違うと思いますので、そこらのところを踏まえて、成果が出ることを期待しておるという段階でございます。

○笠委員 私も、もちろんこれは今から研究していくわけですから、その具体的な中身がこうなるだろうとか、それは本当に今予測できるわけではございませんし、大臣おっしゃるとおりだと思うんですね。
  ただ、私はなぜこうしたことをお伺いしているかというと、来年は日中国交正常化の三十五年ですよね。あるいは、不幸な面でいえば、盧溝橋の事件が起こって七十年という節目が二〇〇七年だと思うんですけれども、そうした中で、確かに歴史認識についてお互いにしっかりと研究をしていこうということは大事なことではあるとは思いますけれども、ともすると、もろ刃の剣というか、お互いが意見をそれぞれ述べ合うことでぶつかり合うことによって、マイナスの方向に行く危険性もあるのではないかと思っているんですね。
  私は、この研究を始めること自体はいいことだとは思います。ただ、特に中国との間における歴史認識の問題というのは、これまでも政治的な問題でもあり、あるいは国民の間でもお互いの対国感情というものを、非常に不信感を募らせたり、そういったこともあるわけですから、そもそものこの研究というものが、例えば何かをまとめていこうという方向性を持って臨むのではなくて、まずは、とりあえず史実に基づきしっかりと客観的な事実を積み上げていこう。
  あるいは、後ほどお伺いしますけれども、メンバーの方々、有識者の方々という中でも、私は中国はわかりませんよ、これは有識者は歴史観がみんな一緒かもしれません。しかし、少なくとも日本の場合には、この十人選ばれる有識者の方の中でもいろいろな違いがあるというのは当たり前のことだと思うんですね。
  ですから、そういった点について、この研究成果というものは、事実関係、できる限りいろいろな資料なんかをきちっと出し合いながら積み上げていくレベルでのまずは試みだという理解でよろしいでしょうか。

○麻生国務大臣 基本的には、客観的な史実、事実に基づいて、双方の持っている資料というのにも差はありましょうし、いろいろな意味で、そういった持っております認識、事実認識というものを相互にきちんと披瀝し合う、これがステップの第一段階としては、今おっしゃるとおり、そこがまず第一段階だと存じます。

○笠委員 もう一度確認しますけれども、その第一段階、これは二〇〇八年で終わる話じゃないので、日韓のときも二年でやろうといったら三年かかりましたよね。ですから、これが、第一段階が早く終わるのか、あるいはもっと長くかかってしまうのか、それは今後の議論の行方でしょうけれども、少なくとも二〇〇八年中ということになっているので、そこで出てくるものは、今大臣がおっしゃったような、その第一段階の報告書的なものが出てくる、そういうことでよろしいですか。

○麻生国務大臣 私も、ちょっと最後の詰めまでどうなる予定なのか、その先生方、たしか北岡伸一先生だったと思いますが、最後のどこまで行けるのかという段階、その経過を見ないと、ちょっと今のこの段階で申し上げられる段階にはございません。
  ただ、二〇〇八年度中だか二〇〇八年中だかに何らかの形でしかるべきものがまとまる、全部が全部一致することはないと笠先生言われるとおりだと私も思いますので、違うところは違うところなりに、それなりにきちんとした形で、Aという意見、Bという意見という形で、一応の中間報告というかそういったものができ上がってくることを期待しております。

○笠委員 というのが、これ、今人選が行われているとお伺いしていますけれども、ちょっとまた後で戻りますけれども、この人選についてはもう報じられて、十人の方、今座長は北岡先生ということを大臣自身がおっしゃいましたけれども、これは報道で、もう既に十人のメンバーが、それぞれ古代・中近世史、そして近現代史と五人ずつ名前も報じられているんですが、このメンバーは、報じられているとおり、北岡さん座長でということでよろしいでしょうか。

○岩屋副大臣 今大臣がおっしゃいましたのは、北岡先生も名前が挙がっているということを承知しているということを大臣はおっしゃったんだと思います。
  今、最終的な調整段階にございまして、今この場で十人がどなたであるということを申し上げられる段階にはないんですが、先生おっしゃったように、近現代史、古代・中近世史の御専門の先生方の中から業績が高く評価されている先生方を、今最終的な確定に向かって選考の途上にあるというふうに申し上げさせていただきたいと思います。

○笠委員 ほぼ内定していると思うんですね。これはマスコミで全社書いていますから。これがもし違うとすれば、それと同時に、私はそういう理解をした上であえて質問させていただきます、それを今言えとかいうことをやっている時間はないので。
  ただ、このメンバーを選定する一つの、済みません、外務省がこれは選定をしているということでよろしいですか。それとも、外務省と官邸で一緒になって選考に当たっているのか、ちょっとそこをまず確認させてください。どなたでも結構でございます。

○岩屋副大臣 おっしゃるとおりでございまして、外務省だけでやっているわけではございませんで、官邸、外務省、それから、予定をされている有識者等が中心になってやっているということでございます。

○笠委員 この有識者の十人の方を選ばれる、先ほど岩屋副大臣が、その道の研究成果いろいろということをおっしゃいましたけれども、例えば、特に近現代史ということになってくると、その先生方の有識者の方の一つの史観というものがございますね、歴史観なり。
  だから、そういったところから、例えばバランスよくいろいろな考えの方を選んでいくのか、今、選ばれたのか、選ばれているのか。あるいは、それともある程度、今の政権、安倍総理なりの一つの歴史観というものに基づき選定をしていこうというものがあるのか。そこあたりの選定の一つの基準というものがあれば、お答えをいただきたいんですけれども、どういうことを基準にして選んでおられるのか。

○岩屋副大臣 先ほども申し上げたように、業績がまず高く評価されているということが大事な選考基準の一つだと思いますし、日中の歴史だけではなくて、国際政治それから外交問題等に精通しておられて、幅広い観点からこの問題を議論していただける方、そういう専門家を選考するということを基準に作業が進められていると思っておりまして、特定の歴史観に偏るということがないように、バランスよく選考が進められているものというふうに承知しております。

○笠委員 業績はだれが評価をするんですか。外務省ですか。外務省が、この業績がすばらしいということを評価しているということでよろしいですか。

○岩屋副大臣 先ほど申し上げたように、委員の人選は、官邸、外務省、それから、恐らく中心になっていただけるであろう予定者といいますか、そういう方で今相談をさせていただいているということでございまして、だれか一人の人が決めていくということではないというふうに御理解いただきたいと思います。

○笠委員 この問題は今後もちょっとやっていきたいので、また、顔ぶれ、私も、すべての有識者のほぼメンバーに決まるであろう方々の業績というものも私がまだ知らない方もおられますので、これ以上具体的には聞きませんけれども。
  そこで、大事なことは、今まさにメンバーの方、もう選んでおられると思うんですが、この十人の有識者の方に、最初の話に戻るんですけれども、この日中歴史共同研究というもののメンバーになっていただくに当たって、何をやってくれと。例えば、先ほど言ったように忠実ないろいろな資料やあるいは史実に基づいて客観的な一つの積み上げをやってくれと言うのか、あるいは、中国側と共有できるものについてお互い議論した上でひとつ例えばまとめ上げてくれないかと、まとまるところについては、お互いに共有できる部分については。そういったことをしっかりとやはり指示をしておかないと、これを任された方もたまらないと思うんですね、恐らくは。
  完全に民間同士の研究だったらいいですよ。しかし、これは、首脳会合で首脳同士が、まさに政治の決定を受けて立ち上がったものですから、そこあたりというものは、有識者のメンバーの方には、どういう言い方で具体的に何をやってくれと。細かいこの時代のどうこうとかいうことじゃなく、そのガイドラインというか、何をこれからの中国側との協議の中で、研究の中で積み上げてほしいということをどういう形でお伝えをされているのかな。あるいは、そういうことはまだ全くこれからなのか、その点をちょっとお答えいただければと思います。

○岩屋副大臣 この歴史共同研究の目的は、先ほど麻生大臣がおっしゃったように、歴史に対する客観的認識を深めることによって相互の理解を増進するということでございますが、この会合ではさまざまな資料等活用して中国側の委員の皆さんと忌憚のない議論を重ねていただきたい旨、しっかり御説明をすることになるというふうに思います。
  また、今後、委員が正式に決定次第、日本側委員の皆さんに一堂に会していただいて、第一回目の会合に向けて十人の委員の先生方の意思疎通を図っていただく予定でございまして、そのときに会合の目的等を重ねて御説明させていただいて、御理解をいただく予定でございます。

○笠委員 相互の理解を深めるというのは、当然ながら、お互いの両国民の相互理解というものが先にはあるわけですね。メンバー同士の、学者同士の相互理解がスタートにはなると思うんです。
  だから、逆に言うと、そこでまとまってきた第一段階のものを当然ながら国民に発表していくということになっていくと思うんですけれども、そのときに、それが果たして本当に、一つは、どこまでこの第一ステージではやるんだよということをやっておかないと、そこをあいまいにしていると、過度な期待をされるような報道でもされたときに、結局は対立点が多かったとか、あるいは過度に何かまとめ上げるんじゃないかというような期待を持って見ていると、どうしてもまとまらなかった部分だけが非常に注目をされ、焦点が当たって、かえって、どういうことだ、やはりこれは相入れないんだということにもなりかねないんじゃないかなという危惧を私は持っているので、逆にこの位置づけというものを、しっかりとスタートするに当たっては、まず第一段階ということで明確にしておいていただきたいと思います。
  そして、もう一点。今、韓国の方、日韓の方は、第一段階を終えて、次は教科書、この歴史教科書の問題にまで研究をというような段階に来ていると思うんですけれども、この日中の歴史共同研究というものについても、将来的にはこの第一段階を終えた後に、私は、はっきり言って、この中国の歴史教科書、きょう岩屋先生や下村副長官もおられますけれども、一緒に勉強したこともございますけれども、やはり明らかに行き過ぎた部分なんかが幾つかあるわけですね。中国から見れば、日本の一部の教科書についてもそういう思いを持っている。そういったところも、ある意味では、将来できれば是正をしていくことができるようなところまでをにらんでこの研究というものを始められるのかどうか、それともとりあえずは研究でいいんだというところでとどめておくのか、この第一段階以降の将来的な研究というもののあり方、それについてちょっとお話を、今の見解をお伺いできればと思います。
     〔嘉数委員長代理退席、委員長着席〕

○下村内閣官房副長官 お答えいたします。
  今御答弁がございましたように、基本的に、日中歴史共同研究は、古代から現代に至る二千年余りの日中関係史について日中有識者間で共同研究を行い、歴史に対する客観的認識を深めることによって相互理解を増進することを目的としたものでございまして、両国の歴史教科書それ自体を念頭に置いて行われるものではございません。
  しかし、この研究の成果いかんにも、御指摘が今もお話として笠委員からもございましたけれども、その内容いかんによっては、将来的には我が国の歴史教科書への一方的な批判をなくしていくことなど、その成果が両国の歴史教科書に関する議論によい影響を与えることも期待できるのではないかと考えております。
  また、中国の愛国主義教育に関しては、十月、安倍総理が訪中した際、安倍総理より日本関連の教育や歴史展示物について適切な対処を要請いたしました。また、外務省においても、中国の代表的な歴史教科書の日本関連部分につき専門家に分析を委託し、その結果を踏まえまして、事実関係に疑問のある記述などについて中国政府に指摘してきているところでもございます。

○笠委員 これから始まるので私も注視をしていきたいと思っておりますけれども、本当に、お互いに歴史観、歴史認識は違えども、その対立を乗り越えて、これが前向きな、建設的な場になることを期待申し上げたいと思います。
  最後に、済みません、きょうは本当はもう一つ、ちょっと拉致の問題等々で岡下政務官にもおいでをいただいていたんですけれども、ちょっとそこまで行きませんでしたので、そのおわびを申し上げて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。