笠ひろふみ衆議院議員 RYU HIROFUMI official website
国会質疑
1166-衆-文部科学委員会-8号 平成19年04月06日

○笠委員 統一地方選挙中で、ちょっと声がかれているんですけれども、民主党の笠浩史でございます。きょうは武力紛争の際の文化財の保護に関する法律案について質疑をさせていただきたいと思います。ちょっとお聞き苦しい点があるかと思いますが、御容赦をいただければと思います。
  文化財と文化遺産というものについては、単にその国の財産としてではなく、まさに人類共通の財産として、過去から現在、そして一番大事なことは、未来へ向けて私どもが引き継いでいく、守っていくということが一番の責務であろうと考えております。にもかかわらず、残念ながら、紛争あるいは自然災害などによって、十分な保護が図れないケースというものもたくさんあることは事実でございます。そうした中、我が国としても、人類共通の貴重な財産、資産である文化財をしっかりと守っていくために国際協力を推進していくということは大変重要だと考えます。
  昨年の通常国会で、超党派で検討してきた海外の文化遺産の保護に係る国際的な協力の推進に関する法律等も成立をさせたわけでございます。こうした中、我が国が今後、文化財保護の国際協力を推進し、さらには海外に向けて文化立国としての存在感を高めていくこと、これは大変重要であろうと考えております。
  まず、質問に先立ちまして、冒頭、伊吹大臣にお伺いをしますが、こうした文化財保護という面で国際協力あるいは国際貢献というものを積極的に行っていくことについて、大臣の御意思あるいは今後の決意というものをまず最初にお伺いいたしたいと思います。

○伊吹国務大臣 先生が御指摘になっているように、単にその国のものだけではなく、国際的に見て、全人類の財産ですから、我々人間の業のような行いの中で、人間がそれを壊すということのないように、各国が自制心を持って対応する、そしておのおの、能力と技術を持っている国は、それのない国に対して手を差し伸べながら、一緒に地球、世界の財産を守っていくという意味では、この条約は一つの試みだと私は思います。
  戦争というのは、ちょうど選挙のときになると政治家がころっと人柄が変わるように、何が起こるかわからぬような事態でもあるわけですから、常にこういう規範的な取り決めをして、自制心を持ちながらやっていく。
  私は京都なんですけれども、アメリカの資料を読んでみると、当時、京都、奈良には歴史的な財産があるからここへ爆撃をしてはいけないという主張をしてくれた人がいたために、日本の文化財はある程度守られてきたというようなことも、やはり、いい意味で人間の良識のようなものもあると私は思いますから、ぜひこの条約の精神にのっとって、我が国は少なくとも諸外国から後ろ指を指されることのないように努力をしたいと思っております。

○笠委員 そうした点から考えますと、武力紛争の際の文化財の保護に関する条約、いわゆるハーグ条約、あるいは同条約の議定書及び第二議定書の締結についての案件が、今回、この国会に提出をされたわけですけれども、ハーグ条約については、御案内のとおり、この条約起草会議にも日本は代表団を派遣して、そして一九五四年九月六日に条約及び議定書に署名もしております。しかしながら、その批准についてはこれまで見送っており、まさに今回、署名から五十年を経て、ようやく今締結しようということになったわけです。
  そこで、きょうは岩屋外務副大臣にもおいでをいただいておりますので、まず、なぜこれほどの時間が、半世紀にわたってかかってしまったのか。私は、ちょっと遅きに失したというような感もぬぐえないんですけれども、その点についてお答えをいただければと思います。

○岩屋副大臣 おはようございます。どうぞお体に気をつけて、余り無理をなさらないように、体を休めていただきたいと思います。
  今お尋ねの、なぜ五十年もかかったかということでございますが、先生おっしゃったように、我が国は一九五四年に署名をしております。しかし、この条約は、ある意味では有事法制の一端をなすものでございまして、先生御承知のように、我が国におきましては、長年にわたって、この条約の実施法を含む有事法制について検討できる状況にはなかったわけでございます。ただ、近年、有事法制の整備も進んでまいりましたので、条約を締結する環境が整ったというふうに判断をしたところでございます。
  それから、条約の中身にもいささか問題がございまして、この条約の中では、特に重要な文化財に対してより高い保護を与える特別の保護という制度があるわけでございますが、この特別の保護が付与されるためには、文化財が軍事目標から十分な距離を置いて所在するという条件を満たす必要があるわけでございます。ただ、この十分な距離というのは具体的にどの程度か、必ずしも明確ではありませんでした。したがって、我が国としては、当初、特別の保護の申請対象として検討していた、例えば京都ですとか奈良等の地域が、大臣のお地元でもございますが、右要件を満たすことができるか不明確であるという問題がございましたので締結が困難であったということでございます。
  しかし、この点に関しましては、二〇〇四年に発効した第二議定書におきまして、特別の保護という、今申し上げた制度を改善する措置がとられました。それは今度、強化された保護という名前になったわけでございますが、距離の概念を条件に含めていない、そういう強化された保護という新しい制度が設けられましたので、この強化された保護の利用を通じまして、特別の保護と同程度の保護を文化財が受けられるということになりました。
  このような状況の変化によりまして、今国会におきまして、条約等の締結につき承認をお願いすることができるようになったということでございます。

○笠委員 では、ちょっと確認をしたいんですけれども。
  ということは、今お話がありましたこの第二議定書が一九九九年三月二十六日に策定され、そして二〇〇四年、今ありましたように、三月九日に発効しておりますが、この第二議定書が作成をされたから今回締結へ向けた具体的な動きに入ったということでよろしいんでしょうか。先ほどの前段の部分での理由、それ以外では、とりあえず第二議定書の発効が我が国の締結へ向けての動きを大きく加速させた一番の理由というふうに考えていいのかどうか、お答えをいただけますか。

○岩屋副大臣 今申し上げたように、両方なんですけれども。一つは、有事法制の環境が整ったということと、それから、第二議定書の発効によりまして、つまり距離にかかわらず文化財を指定することができるという、強化された保護という概念が出てきた、これがやはり大きな理由になっているということでございます。

○笠委員 その強化された保護についてなんですけれども、確かに、距離の問題、いろいろとあいまいな部分があったわけですね。それで、我が国としては、これまであった特別保護、そこから、今後の国内の文化財を守るに当たっては、この条約あるいは議定書の締結によって、強化された保護に準じて国内の体制づくりを極力進めていくというようなことでいいのかどうかの確認をお願いいたします。

○高塩政府参考人 お答え申し上げます。
  今先生御指摘のように、二〇〇四年に発効いたしました第二議定書におきまして強化保護制度というものができましたために、この条約の批准に向けた動きが加速しているということでございまして、まさに強化保護文化財の制度につきまして、私どもとして今後検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。

○笠委員 具体的なことについては後に譲らせていただきますけれども、このハーグ条約については、二〇〇七年二月一日現在で、私がいただいた資料によりますと百十六カ国が締結をし、議定書についてはこの時点で九十三カ国が締結をしている。しかしながら、アメリカあるいはイギリスあるいはお隣の韓国は締結をしていないわけですけれども、外務省としては、特にアメリカですね、なぜ米英というものが締結をしていないのか、あるいは、今後締結へ向けて、具体的な動きが今あるのかどうか、その点についての今の状況についての説明をお願いいたします。

○岩屋副大臣 お尋ねの米英についてでございますけれども、米国においては、当時のクリントン大統領が、一九九九年一月に上院に対して条約批准のための助言と同意を求める書簡を発出しております。しかし、その後上院ではいまだに本件に関する審議が行われていないということで、私どもも米国政府に照会をいたしましたが、米国政府としては条約の締結に関し問題があると認識しているわけではないけれども、議会において強い関心が必ずしも得られていないということで優先順位が上がっていないというふうに承知をしております。
  それから、英国でございますけれども、先ほどの距離の話などもそうだったと思うんですけれども、この条約に不明確な部分が多い、したがって英国もこれまで未締結であったと承知をしております。しかし、第二議定書が採択されたことによりまして環境が整ったとして、今英国におきましても締結に向けて作業が進んでいるというふうに承知をしております。

○笠委員 アメリカについては、今お話があったように、クリントン大統領の時代には前向きであったと、大統領自身としては。
  これは実は全く違う案件なんですけれども、先般私も外務委員会の方で、例の国際刑事裁判所、これも実はクリントン時代には非常に積極的な動きがあったけれども、ブッシュ大統領の時代になってどうもその動きがとまっているというようなことで、そこは議会の、アメリカの問題でありますけれども、実際に武力紛争における文化財の保護ということになれば、この数年というか近年を見ても、やはりアメリカが締結していなくて果たして実効性があるんだろうかというようなことを私は大変危惧しているわけでございます。
  そこで、まず一つ確認をしたいんですけれども。これは事務方で結構なんですが、この締結をしていない国、例えば具体的にはアメリカは、仮にアメリカが当事者となって武力紛争を、イラクのような場合、起こしたときに、ではアメリカはイラクの文化財を守る義務というものがあるのかどうか、それともそれは全くないということなのかどうか、そこをまず御説明いただきたいと思います。

○猪俣政府参考人 条約の問題でございますので私の方から答弁させていただきますけれども、締約国でなければ当然条約上の義務というのは生じませんので、その限りにおきまして、今の設定のお話でありますと、適用の対象にはならないということでございます。

○笠委員 このアメリカについては、イラク戦争など武力紛争の当事者に、残念ながら、なる機会がこの近年多かったと思います。
  それで、イラク戦争でも、当時かなりの問題になりましたけれども、相当な文化財が失われたのは御存じのとおりで、とりわけ、占領後、イラク国立博物館が略奪の対象となって、文化遺産がそういう略奪行為の被害に遭うということが残念ながら起こったわけです。
  ただ、一方で、イラクは、ハーグ条約あるいは議定書、ともに一九六七年に締結をしているわけですね。ということは、そもそもの問題として、たとえ締結したとしても、このように、実際には守れなかったということについては、これはこれから日本としても、本当に実効性を高めていくために何をやらなければいけないのかということを考えていかなければならないんですけれども、当時イラクの国立博物館というのは、イラク的に言うと保護される対象、これはアメリカに対してということじゃなく、保護される対象としてはリストアップをされていたのかどうか、ちょっとお答えをいただければと思います。

○岩屋副大臣 済みません、ただいまの御質問は突然の御質問だったので、博物館そのものが登録されていたかどうかというのはちょっと今確認できません。
  先生御指摘のように、あのイラクへの武力行使の際の混乱によって、博物館などで数多くの貴重な文化財が被害を受けたと承知をしておりますが、当時報道でもありましたように、それはどちらかというと自国民による略奪が多かったのではないかと承知をしております。米軍による文化財の組織的な破壊、略奪行為があったという情報には私どもは接しておりません。

○笠委員 略奪が、そのほとんどがイラク人によって、自国民によって行われたとしても、占領下にあるわけですよね。ということは、アメリカ、あるいはイギリスであれ、その占領している側に、そういった文化財の警備をするあるいは守る義務というものは、このハーグ条約を締結していた場合には生じるのか、あるいは締結していないから守る義務というものはないんだということになるのか、その点をちょっと事務的にお答えいただければと思います。

○猪俣政府参考人 条約の締約国であれば、その締約国が仮に占領しているという状況におきましては、占領下にある文化財を保護、守るという義務が生じます。

○笠委員 ということは、すなわちアメリカやイギリスにはそれを守る義務というものは、少なくともこの条約上はなかったというか、締結していないからなかったということと理解するんですけれども。
  要するに、私が申し上げたいことは、紛争の際には、一方の当事国が締結していなければ、たとえハーグ条約を批准し締結していたとしても、実際には文化財が守られるという実効性というものが担保されていないという、この一面は大変大きな今後の課題ではないかというふうに私は思っております。
  そこで、実効性を高めていくために、我が国として今後、例えば未締結の国々、特段アメリカなどに対して、これは外交として締結を働きかけていく考えというものがあるのかどうか、岩屋副大臣にお伺いをいたします。

○岩屋副大臣 先生おっしゃるとおり、より多くの国がこの条約を締結することが重要だと私どもも考えておりまして、私どもがこの条約を締結した後には、御指摘の米国を含む関係国に対しまして、条約等の締結に向けた働きかけを行っていく所存でございます。

○笠委員 こういう文化財における外交というものは日本として大変積極的に貢献できる分野だと思いますので、その点は今後ぜひ政府として積極的に働きかけをして、せっかく半世紀たって加盟をするわけですから、この後日本がその中でどういう形でリーダーシップを発揮していくのかということは本当に大事な点だと思いますので、これはぜひお願いを申し上げたいと思います。
  ちょっと順番が前後するんですけれども、このことに関連しまして。
  ブルーシールドの国際委員会というものが現在あるんですけれども、これは、各国NGO等々が一緒になって取り組みを進めていくためにつくられているものなんですが、今、限られた国ですけれども、ブルーシールドの国内委員会というものを設置している国があるんですね。
  それで、国際会議等々の中で、この国際委員会と、国内委員会を設置している国々が一緒にいろいろな会議をやって、文化財を守っていくための枠組み、あるいはそういう実効性ということについてもかなりいろいろな議論をしているというように伺っているんですけれども、今回、我が国が締結後に、そうしたブルーシールド国内委員会などについても、我が国として国内の委員会を設置するような考えがあるのか、このことを外務省にお伺いいたしたいと思います。

○高塩政府参考人 お答え申し上げます。
  今先生御指摘になりましたブルーシールドにつきましては、国際委員会というものがございまして、これは一九九六年に設置されまして、国際公文書館会議、それから国際博物館会議、記念物及び遺跡に関する会議、国際図書館連盟により構成されるいわゆるNGO、非政府組織でございまして、条約の遂行につきましても、ユネスコを支援するということを目的としておるものでございます。
  お話のございましたブルーシールド国内委員会は、その国際委員会の活動を国内で支援する組織でございまして、現在、十以上の国で設置されているというふうに承知いたしているところでございます。これらの国内委員会につきましては、災害等の緊急事態への対応などでその活動への期待が高まっている。
  我が国におきましても、既存の組織等の活動を視野に入れまして、この法案の成立を踏まえまして、国立国会図書館を初め関係の機関とともに、国内委員会についての検討を行ってまいりたいというふうに考えております。

○笠委員 次長にちょっと確認したいんですけれども。
  ということは、設置の方向で検討をしていくということでよろしいでしょうか。

○高塩政府参考人 私ども承知していますのは、今、国立国会図書館中心にそうした動きがございますので、そうした動きと連携してまいりたいということでございます。

○笠委員 この点については、今確かに国立国会図書館の方でということですけれども、ぜひ政府としても後押しをしていただき、これはいいことだと思うんですね。まだ十数カ国ですから、日本としてこの国内委員会というものを設置して、他の先進国はまだ設置がおくれていますから、五十年ぶりと、ちょっとおくれた分、今後のことが大事なので、ぜひ設置へ向けて積極的な働きかけをしていただきたい、そのことを申し上げておきたいと思います。
  次に、今回の法律案について幾つか具体的に確認をさせていただきたいと思います。
  まず最初に、今回我が国は、この議定書にある文化財の返還の義務、このことについての規定を留保するということになっておりますけれども、議定書3の規定によって認められているこの留保宣言によって、我が国は文化財の返還の義務については留保をすると。この留保した理由というものを、まず最初にお伺いいたしたいと思います。

○岩屋副大臣 この議定書は、締約国の義務として、武力紛争の際に占領地域から自国に輸入される文化財を管理する、それから、武力紛争終了の際に、管理していた文化財を占領地域に返還することを定めているわけでございます。
  我が国といたしましては、このような義務を履行するために、今国会に提出されております武力紛争の際の文化財の保護に関する法律に基づき、次のような措置をとることにしております。
  まず、占領地域から輸出された文化財が我が国に流入することを防ぐ、水際で規制をする。輸入を承認しないという措置になろうかと思いますが、それをやる。にもかかわらず輸入された文化財については、散逸、滅失を防止するための規制を課すということにしているわけでございます。
  さらに、領域内に輸入された文化財のうち、国が管理しているものについては、武力紛争終了の際に、占領された地域の権限のある当局に返還することといたしております。
  他方で、善意の所持者が管理をするもの、そういう、文化財であって、盗品である、略奪されたものであるということを知らないで、善意で所持をしているものについては、民法の第百九十三条の規定によりまして被害者に返還することになりますが、その規定によれば、盗難または遺失のときより二年を超えた場合にはその物の回復を請求することができなくなる、基本法であります民法にそういう規定がございますので、この部分については留保せざるを得ないというふうに判断をしたところでございます。

○笠委員 今御説明があったように、民法の百九十三条の規定によってというお話がるるあったんですけれども、善意の取得者に対しては、盗難または遺失のときより二年間その回復を請求できるのみだということですよね、言いかえるならば。
  占領地域から流入した文化財、これは水際でとめられればいいんですけれども、そうでない場合もやはりあると思うんですよね。民法だけでは、売り手というのは逆に責任逃れをしやすくなるし、今度は買い手の側からすれば所有権が与えられるということにもなりかねない。ちょっと私は、これだけでは非常に甘いんじゃないかというような気がしておるんです。
  今の二年を、例えばもっと期間を、十年にするとか、延長するとか、そういう何か対応をしていかなければ、なかなかこの流入というものを防ぐことはできない。そういうふうなことを非常に危惧するわけですけれども、その点について、今後どういうふうな形で対応していくのか、もし今検討されていることがあればお伺いをさせていただきたいと思います。

○岩屋副大臣 その点はちょっと外務省の範囲を超えると思いますが、基本法であります民法を、その部分を先生おっしゃるように改正してまで締結をすべきことなのかどうか。やはり全体の法体系のバランスとかいろいろなことを考えなきゃいけないというふうに思っておりますので、不十分ではないかという御指摘は承りますが、現在においては、国内法との関連上、民法の規定を改定してまで締結するには及ばないのではないかということで、その部分は留保させていただいた上で条約を締結させていただきたい、こう考えているところでございます。

○笠委員 私も、これは本当に、現在の法体系では確かに留保せざるを得ないということは理解できます。ただ、その点も今後検討していく課題として、ぜひ御認識をいただきたいということを申し上げたいと思います。
  もう一点、被占領地域から流出した文化財を輸入する場合には経済産業大臣の承認が必要であると本法律案の第五条に規定をされているんですけれども、基本的に、輸入が認められることは恐らくないのではないかと思います。
  ただ、輸入が認められなかった場合に、所有者がその所有権を放棄することも考えられると思うんですよ、恐らく認められないので。そうした場合には、その文化財の保管とか、あるいは返還についてはどのような措置がとられるのか。これは事務的にお答えをいただければと思います。

○高塩政府参考人 今先生御指摘のように、これは輸入の規制をいたしまして、被占領地域の流出文化財であれば、その時点で輸入を認めないということでございます。
  それから、今先生御指摘のように、輸入した者が放棄した場合には国が没収するということになりまして、国の方においてその文化財を流出した国に返還するという手続になるというふうに考えております。

○笠委員 それでは、次に、ブルーシールド、いわゆる特殊標章、このことについて幾つか具体的にお伺いをしたい。
  済みません、先ほど冒頭にちょっとお伺いをしたんですけども、先に強化保護の文化財の指定についてお伺いをしたいんです。
  この締結をした後、国内では、いろいろな形で、何を具体的に指定していくのか、どの文化財を強化保護の文化財として指定していくのかということの作業に当然入っていくことになると思うんですけども、まず最初に、この条約が締結をされた後、もう速やかにその指定をしていくような段取りになっていくのか。それともう一点は、指定される範囲ですね、どういう基準でこの指定を行っていくのかということを文化庁の方にお伺いしたいと思います。

○高塩政府参考人 お答え申し上げます。
  今先生御指摘のありました強化保護文化財につきましては、現在、武力紛争の際の文化財の保護に関する委員会、これはユネスコの方でございますけれども、におきまして、強化された保護の付与に係る詳細な手続、基準について作成中であるというふうに承知いたしております。
  私どもといたしましては、この手続それから基準を踏まえまして、どのような文化財を対象にしていくかということを検討するということになるわけでございますけれども、第二議定書におきましては、強化文化財の要件につきまして、例えば、人類にとって最も重要な文化遺産であること、また、当該文化財が文化上、歴史上特別の価値があり、最も高い水準の保護を確保する適当な立法上、行政上の国内措置により保護されていること等々の要件がございますので、こうした要件も踏まえまして、今ユネスコの方で検討されております基準等が作成されるのを受けまして、今後検討を行っていくということになろうかと考えております。

○笠委員 確認なんですけれども、確かに、どちらかというと、今のお話にあったように、この第一の要件として、文化財が人類にとって非常に重要な文化遺産であることということだけで、各国共通の明確な基準が定まっていないわけですね。各国にその基準は今はゆだねられているというような状況だと思うんです。ということは、今のユネスコで検討されている、もう少し踏み込んだ共通基準というものができてから、我が国としてはその具体的な選定に入っていくということでいいのかどうかということと、ユネスコで検討されている共通基準的なものというのは大体いつぐらいに出てくるのか、その点についての見通しをお答えください。

○高塩政府参考人 お答え申し上げます。
  今先生おっしゃられたとおり、ユネスコの具体的な基準等を受けまして、私どもで検討に入るということを考えております。
  この第二議定書は二〇〇四年に発効いたしておりまして、それから検討しておりますので、私ども、いつまでにその基準が示されるかということは必ずしも承知していないわけでございます。
  また、我が国におきまして、この強化保護文化財のリストをつくっていくということにつきましても、今すぐに我が国が武力紛争事態になるということを想定されないということもございまして、そういったさまざまな状況を踏まえまして、私どもとしては検討を行っていくというふうに考えております。

○笠委員 確かに今すぐに想定はされないでしょうし、あってはならないことだとは思うんですけれども。本当に、何が起こるかわからないという中では、確かに、実際に指定をするのは、ユネスコの今の検討されている基準が決まってからでもいいと思いますけれども、ある程度、重要文化財なのかどうなのか、あるいは世界遺産に登録をされているものになってくるのか、その辺の国内における検討を政府として進めておくことは、これは別に並行してやっていても私はいいのではないかと思うんですけれども、その点について、伊吹大臣、どうですか、そこあたりは。
  もちろん、正式な決定はユネスコの基準が出てからということですけれども、せっかくこれから締結をするわけですから、それを受けて、独自に国内でやはり検討していくべきではないかということについてのお考えをお願いします。

○伊吹国務大臣 世界文化遺産とかいろいろ既に指定されているものもあるわけですから、ユネスコでの審議の状況も見きわめながら、腹づもりをしておくということは大切だと思いますが、とかくこういうものはだれかがぺらぺらしゃべりやすいもので、陳情合戦とかいろいろなこともありますから。
  まあ、内々、先生の御注意を拳々服膺して、検討させていただきたいと思います。

○笠委員 陳情というのがどれぐらいあるのかよくわかりませんけれども、その点についてはぜひ検討をしていただければと思います。
  それで、もう一点、今回の条約の第一条の(c)に規定する記念工作物集中地区の指定というものが、これは文化財が多数所在する地区を本条約の保護を受けるものとして定義をされているわけです。諸外国の例でも、特別保護文化財として登録されているバチカンでありますとか、あるいは記念工作物集中地区として挙げられているわけですけれども、我が国では、この記念工作物集中地区については文部科学大臣が指定をするということになっておるんですけれども、どのような地区を想定されるのか、その点についてお答えをいただければと思います。

○高塩政府参考人 お答え申し上げます。
  今先生御指摘のございました、条約の第一条の(c)に該当いたします文化財が多数所在する地区、いわゆる記念工作物集中地区につきましては、この法律の第三条一項に基づきまして、文部科学大臣が指定することになるわけでございますけれども、実際にどのような範囲で指定するかにつきましては、武力紛争時に想定される状況や事態の対応など、文化財の分布等を勘案しつつ指定することが適当であるというふうに考えております。
  具体的には、多数の重要文化財等が集中しております神社の境内地、世界文化遺産などが対象になり得るものというふうに考えております。

○笠委員 これはちょっと確認なんですけれども、この記念工作物の集中地区として、特別保護文化財として、例えば先ほど話があった京都であるとか奈良であるとか、世界から見ても本当に世界の文化遺産としてきちっと守っていかなければならないと認識されているような市、町というものを特定して、それを指定するというような考えというものがあるのかどうか、あるいはそれができるのかどうか、その点についてお伺いをいたしたいと思います。

○高塩政府参考人 お答え申し上げます。
  記念工作物集中地区につきましては、条約上、その明確な範囲というものは定められておりませんけれども、広く一つの県ないし市を単位として指定することにつきましては、各国の理解を得にくいものというふうに考えております。
  例えば、先生御指摘の奈良や京都全体を記念工作物集中地区として指定する場合には、平時から当該地域に対しまして一定の保全措置を図るということがございますけれども、関係省庁それから地方公共団体、当該地域住民等の協力が必要でございまして、広範囲にわたる指定につきましては調整が困難であり、それはなかなか難しいというふうに考えておりまして、もう少しそれよりも集中した形、例えば、京都、奈良であれば、世界遺産に指定をされております古都京都の文化財、古都奈良の文化財ということになっておりますので、県全体とか市全体ではない、そういった単位の指定になるのではなかろうかというふうに考えております。

○笠委員 ただ、世界遺産に登録されているそういう文化財だけといっても、例えば町並みであるとか、あるいはそれに指定をされていないけれどもやはり町全体を残していかなければならないとか、きょう冒頭にお伺いしたように、日本がこれまで第二議定書ができるまで批准をしてこなかった大きな理由の一つとして、やはり京都やあるいは奈良といったところのその距離という問題で、そういったところを想定して、日本としてはそういったところが指定をできないのであればこれは難しいというようなことが大きな理由としてはあったと思うんですよね。
  ということは、今乗り越えていかなければいけない自治体の協力であるとか、いろいろあるにしても、やはりその範囲を広げて指定をしていくということも考えていいのではないかと思うんですけれども。先ほど言ったように、これはまだ全くそういうことは考えられないのか、確認なんですけれども、それともそういう指定をする可能性もあるのか、ちょっとその点、もう一度確認させてください。

○高塩政府参考人 この記念工作物集中地区につきましても、指定の際には、文化財の専門家等から成ります会議におきまして御検討いただくということでございます。
  範囲につきましては、先ほど申しましたけれども、余り広い範囲ということではなかなか難しいですけれども、先生今の御質問の冒頭にございました、いわゆる町並みといった、伝統的建造物群というのが今全国に七十九カ所ございますけれども、そういうところを指定することは十分考えられるというふうに考えております。

○笠委員 そのことはまたその委員会等々で検討されていくんでしょうけれども、そもそも、じゃ何を守るのかと。日本にとって、また世界にとって、これは文化財というものの範囲そのものにもかかわってくるテーマであると思いますので、この締結をされた後、またぜひ当委員会等々でも議論をさせていただきたいと思います。
  次に、ブルーシールドの特殊標章のことについて、若干お伺いを具体的にさせていただきたいと思うんです。
  本法律案の第六条で、武力攻撃事態において、次の場合を除いて特殊標章の使用は禁止されるということで、一つ目に、国内文化財の管理者が、武力攻撃事態において、当該国内文化財または当該国内文化財の輸送のために使用する車両を識別する目的で使用する場合、二番目として、武力攻撃事態において、国内文化財の保護に関する職務を行う国または地方公共団体の職員等を識別させるため交付された特殊標章を表示した腕章及び身分証明書を着用、携帯する場合ということがあるわけでございます。
  この一つ目の、管理者が、武力攻撃事態において、当該国内文化財または当該国内文化財の輸送のために使用する車両を識別する目的で使用する場合なんですけれども、これは任意であるということが第六条の第二項で規定をされていると思うんですけれども、任意ということで、わざわざ特殊標章を付す意義が、当該文化財が条約の保護の対象となる文化財であることを知らしめて攻撃を防止するということなわけですよね、そうすれば、任意ということで果たしてその意義というものが担保されるのかどうか、その点をお伺いいたしたいと思います。

○高塩政府参考人 お答え申し上げます。
  先生御指摘のように、条約上、また法律上におきまして、この特殊標章を武力紛争時に文化財につける、識別させるためにつけるかどうかはあくまで任意だということでございますけれども、当然、文化財の保護というのは非常に大切なことでございまして、私どもといたしましては、この法律の制定後につきましては、文化財の所有者に対しまして、この特殊標章の制度につきましても十分周知を行いまして、こういった仕組みがあるということの理解を求めていきたいというふうに思っております。

○笠委員 保護する対象としての文化財をどうするのかということは、先ほどまだ時間がかかるということなんですが、仮にその対象が決まってきたときに、実際にこのブルーシールドをいつの時点で、これは決まったらもう平時から、登録されたことを受けてすぐに、このブルーシールドをつけて表示をしていく、そしてまた認知をさせていく、周知をさせていくということになるのかどうか、その辺の段取りについてお伺いをできればと思います。

○高塩政府参考人 お答え申し上げます。
  この特殊標章、ブルーシールドにつきましては、あくまで武力紛争時において、まさに攻撃を避けるための文化財の識別を容易にするための標章ということでございまして、平時においてこのブルーシールドを表示するということについては格別の意義がないというふうに考えてございます。
  ただ、武力紛争時というのはいついかなる事態が起きるかわかりませんから、どういう形で表示のための準備をするかということについては、その所有者は日ごろから考えておらなければならない問題だというふうに考えますけれども、現時点においてこれを準備するということは私どもは考えていないということでございます。

○笠委員 私は、武力紛争のときに表示するというのは、もう現実として無理だと思いますよ。いつ来るかわからないわけですし。ちょっと例は悪いかもしれませんけれども、北朝鮮あたりから突然の攻撃を受けるという事態になるようなことだって、これはゼロではない。そういったときには、文化財どれを守るんだなんていうことの前に、まずは人命ですよね。そうしたらやはり、平時からしっかりと。
  もちろん所有者の方が表示してほしくないということであれば、それは別かもしれませんけれども、基本的には、平時においてしっかりと指定をして、そしてこの文化財というものはそういう対象になっているんだということを、これは海外に向けてだけではなくて、我が国の国民に対してもしっかりと認知をさせておかなければ、恐らくこういう条約を批准しても、ほとんどの方はわからないと思うんですね。そんなことをやっているのかと。
  ですから、やはり意識をしっかりと高めていくためにも、ある程度、これは登録をされたら速やかに平時においてこのブルーシールドをきちっと表示していくべきであると私自身は考えているんですけれども、この点について、例えば大臣、何か御所見があればお願いいたします。

○伊吹国務大臣 条約を読んでみると、平時において先生がおっしゃった標識を使用することを禁止しているわけではありませんのでね。ちょうど、赤十字というか、レッドクロスのようなものだと思います。戦争のときも、赤十字をつけているものについては攻撃をしないとか。
  ですから、平時において赤十字を使ってはいけないということはないわけですから、多くの方々にそれを理解していただいて、その精神をわかっていただくために、先生の御提案のことをやって悪いということはないと思いますから、よく事務的に検討させたいと思います。

○笠委員 本当に大臣に前向きな御答弁をいただきましたので、時間が参りましたけれども、今回の条約を批准する、そして締結をするということは、私も大いに歓迎をしたいし、これは当然のことだと思っています。ただ、やはり、条約の締結をしたものの、これは世界全体として実効性をいかに担保していくか。あるいは、我が国の文化財を守っていくために、いかに、こちらの方の実効性も含めて、今後また政府内において、とりわけ文科省と外務省、関係の一番深い省庁でございますので、ぜひその点についての積極的な今後の施策についての御検討をお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。